税金の計算

不動産を購入したり、相続や贈与などで取得すると税金がかかります。

僕も売買取引きの席で、「土地や住宅を買うため大金を払うのに、そのうえ税金も取られるのか」とか、「親から子へ土地を譲るのにも税金払うの?」というふうに、不満のまじった質問を受けることがあります。

でも残念ながら、税法には不動産を取得すると税金を払うよう定められていて、納めることが義務である以上、知らなかったではすまされません。

Profile この記事を書いた人

ブログ運営者不動産会社に勤務しているシュンペーです。
お客様を相手にしていつも思うのが、納得いただける説明ができているだろうかという点です。
頭で思ったことを正確に伝える練習の一環として、ブログを始めました。
不動産屋の説明がわかりにくいと感じる方のため、痒いところに手が届くようなブログにできればいいなと思っています。
資格 ~ 不動産コンサルティング、宅地建物取引士、2級建築士、賃貸不動産経営管理士など。

この記事は、これから不動産を購入する人や、相続などで取得する人の参考になればという思いで書いてます。

この記事でわかること
  • 不動産の取得でかかる税金の種類
  • 不動産の税金がかかるタイミング
  • 不動産の税金それぞれの計算方法

不動産を取得したときの税金

土地や住宅を購入、または相続などで取得したときや、建物の新築や増改築をしたときは税金がかかります。主なものは次のとおり。

税金の種類 税金のかかる時期
登録免許税 土地や住宅を取得して、自分の権利を明らかにするため登記をしたとき。
不動産取得税 土地や住宅を取得したり、建物を新築・増改築したとき。
贈与税 親や親族から、住宅を取得する資金の贈与を受けたとき。
相続税 相続や遺贈で、土地や住宅などの財産を取得したとき。

これら以外にも、売買契約書の作成にかかる印紙税とか、建築費にかかる消費税などもあります。

では、順番に説明していきますよ。

登録免許税

登記済権利証

土地とか住宅といった不動産を取得したら、権利を確保するための所有権移転登記や建物の保存登記をすることになります。

そして登記をしたら、必ず納めることになるのが登録免許税という税金です。

すでに登記をした経験がある方でも、登記の手続きは司法書士に依頼する人がほとんどなので、税金を払ったという実感はないかもしれませんね。

登記の中でも所有権に関するものはとくに重要で、所有権の移転や保存の登記がなされていないと、個人所有の不動産でも法的には自分の財産であると主張できないことになっています。

自分のものだと主張できなければ、誰かに占有されたり、勝手に売買されても対抗できないことになるので怖いことです。

登録免許税は、登記申請時に1回だけ課税されます。権利を確保するために必要な登録料と考えればいいでしょう。

登録免許税の計算の仕方

登録免許税は、次の算式で計算します。

不動産の価額(固定資産税評価額) × 税率 = 税額

固定資産税評価額は、市町村役場に備え付けの固定資産課税台帳に登録されている価額のことです。この価額が高くなるほど税額も高くなります。

[登録免許税の税率]

  • 不動産売買   ⇒ 1000分の20 (2%)
  • 遺産相続    ⇒ 1000分の4 (0.4%)
  • 生前贈与    ⇒ 1000分の20 (2%)
  • 財産分与    ⇒ 1000分の20 (2%)

上記の税率を当てはめたときの登録免許税の目安は次のとおり。

固定資産税評価額 売 買 遺産相続 生前贈与 財産分与
500万円 10万円 2万円 10万円 10万円
1,000万円 20万円 4万円 20万円 20万円
2,000万円 40万円 8万円 40万円 40万円
3,000万円 60万円 12万円 60万円 60万円
5,000万円 100万円 20万円 100万円 100万円
1億円 200万円 40万円 200万円 200万円

ただし、時限立法で売買については軽減措置があり、一定の要件を満たせば住宅用の土地や建物の登録免許税は安くなります。

ちなみにですが、固定資産税評価額は相場価格(市場で売買取引される価格)のことではなく、相場価格よりは低く設定されているのが普通です。

固定資産税評価額が知りたいときは、市町村役場の課税課で固定資産課税台帳を閲覧して調べることもできますが、固定資産税評価証明書を請求するほうが簡単ですね。200円くらいです。

請求には運転免許証など、身分を証明するものの提出が求められますが、誰かの代理で請求するときには、それに加え本人からの委任状も必要です。委任状の用紙は窓口でもらえますし、僕は何度も代理でもらったことがあります。

不動産取得税

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土地や住宅などの不動産を取得したときに、一度だけ課税されるのが不動産取得税という地方税です。

売買や交換、あるいは贈与を受けたりして不動産を取得したときや、建物を新築・増改築したときに課せられますが、相続で取得したときだけは例外で非課税です。

先に述べた登録免許税と違うのは、不動産取得税の場合は登記をするしないに関わらず、所有権を取得したという事実だけで課税されるところです。

不動産取得税の納税通知書は、土地などを取得してから数か月後に届くので、僕は売買取引のときには必ず、買主さんにその点注意するよう伝えています。

それでも、忘れた頃にやってきた納税通知に驚いて、「税金を払えという手紙がきたけど何のことですか?」と焦って電話をかけてくる方が、たまにいらっしゃいます。(笑)

不動産取得税の計算の仕方

不動産取得税の計算は次の算式によります。

不動産の価額(固定資産税評価額) × 税率 = 税額

基本的に登録免許税のときと同じ算式ですが、税率が違います。

不動産取得税の税率は4%が基本ですが、令和6年3月31日までは時限立法による軽減措置により、住宅に関する土地と建物は3%で計算されます。

住宅関係 土地 3% 令和6年3月31日まで
建物 3%
住宅以外
(店舗・事務所)
土地 3%
建物 4% ――――――

さらに、土地のうちでも宅地の場合は、やはり令和6年3月31日まで固定資産税評価額は半額で計算する特例措置があります。

ほかにも不動産取得税には、建物の築年数や評価額による軽減措置があったり、個人では軽減の適用があっても法人にはない等、割と複雑な面もあります。

とくに、個人が居住用に取得する場合の不動産取得税は、条件によりかなり大幅な軽減を受けられることが多いので、不動産を取得するときにはチェックしておきたいですね。

贈与税

プレゼント

贈与税は、不動産や現金などの贈与を受けたときにかかる税金です。

注意したいのは、土地や建物の贈与を受けたときだけでなく、住宅を取得する資金援助として親などからお金をもらった場合も、その額によっては贈与とみなされる点です。

不動産の場合で贈与の対象になるのは次のようなときです。

  1. 金銭の授受がなく、土地や住宅の名義変更がなされたとき
  2. 土地や住宅が、相場より著しく低い価格で売買されたとき

1についてはそのまま理解できると思いますが、注意しないといけないのが2の場合で、これ知らないと、やっちゃう可能性あるんですよね。

たとえば、親子の間とか親族間で名義変更するのは、不動産で売却益を出すのではなく、譲り渡すのが目的になると思います。

このとき、ただ名義変更したのでは贈与になるので、売買したカタチをとれば贈与税を免れるとお考えになる方がいるわけです。

でも売買のカタチをとる以上、さすがに価格が0円というわけにはいかないので、とりあえず売買契約書に金額を記入するのですが、これが低い数字になりがちなんですよね。

親子あるいは親族間において、「いくらで売り買いしようが勝手だろ」と言いたいところですが、市場で取引される相場価格を大きく下回ると、税法上では贈与があったものとみなされ、贈与税をかけられるので要注意なんです。

贈与税の計算の仕方

贈与税の計算は、次の算式によります。

1年間に贈与を受けた財産の価格の合計 - 110万円 = 課税価格

課税価格 × 税率 = 税額

1年間というのは、その年の1月1日から12月31日までのことで、110万円は基礎控除の額です。

年間110万円までの贈与には、税金がかからないということですね。参考として贈与税の速算表を載せておきます。

[20歳以上(令和4年4月1日以後は18歳以上)で直系尊属から贈与を受けた場合]

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円 〃 15% 10万円
600万円 〃 20% 30万円
1,000万円 〃 30% 90万円
1,500万円 〃 40% 190万円
3,000万円 〃 45% 265万円
4,500万円 〃 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

 [上記以外で贈与を受けた場合]

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円 〃 15% 10万円
400万円 20% 25万円
600万円 〃 30% 65万円
1,000万円 〃 40% 125万円
1,500万円 〃 45% 175万円
3,000万円 〃 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

贈与税にも税額を軽減できる特例措置が設けられています。

とくに、住宅を取得するための資金を親をはじめ親族からの贈与を受けたとき、普通なら高額にかかる課税額をかなり節税できる方法もあります。

住宅取得資金の援助を受ける人も援助しようと検討している人も、贈与税の特例措置についてはチェックしておきたいところです。

相続税

家の鍵

相続税とは、亡くなった人(被相続人)から財産の移転を受けたときにかかる税金で、相続や遺贈(遺言によるもの)によって財産を取得した個人に対して課税されます。

ただし、財産の課税価格(税金の対象となる価格)の総額が、遺産に係る基礎控除額以下であれば非課税になります。

相続税の対象となる財産

お墓とか仏壇といったような特定のもの以外、土地・建物などの不動産、有価証券、預貯金、現金、貴金属、書画・骨董など、亡くなった人のすべての財産が相続税の対象となります。

また、生命保険金、死亡退職金、保険契約に関する権利、定期金に関する権利など、相続や遺贈により取得したものとみなされる財産も相続税の対象になります。

法定相続分について

民法においては、各相続人が取得する財産の割合を定めていますが、これを法定相続分といいます。

ただ実際には、取得する財産の配分は相続人の協議によって決めるのが普通です。

相続人 法定相続分
配偶者と子供の場合 配偶者1/2、子供1/2
配偶者と直系尊属(父母など)の場合 配偶者2/3、直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

※子供が数人いる場合、たとえば配偶者と子供3人のときは、配偶者1/2、子供それぞれ1/2 × 1/3 = 1/6というふうになります。

相続税の計算の仕方

これまで出てきた税金と比べると、相続税を算出するためには少し複雑な手順を踏む必要があり、最終的に税額を出すまでの流れは次のようになります。

  1. 課税価格を算出する
  2. 課税遺産総額を算出する
  3. 相続税の総額を計算する

1.課税価格の計算式

相続税の対象となる財産の価額 - 債務及び葬儀費用 + 生前贈与財産の価額 = 課税価格

生前贈与財産は、被相続人の死亡前3年以内に贈与されたもののことで、課税価格は各人別に計算します。

2.課税遺産総額の計算式

各人の課税価格の合計額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額

基礎控除額は、次の算式によります。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 = 基礎控除額

相続税の項の冒頭で示したように、この段階で各人の課税価格の合計が基礎控除額を下回る場合には、相続税はかからないことになります。

3.相続税の総額の計算式

課税遺産総額 × 法定相続人の法定相続分の割合 × 税率 = 各人の法定相続分に対する税額

そして、各人の税額を合計したもの = 相続税の総額となります。

[相続税の計算目安表]

法定相続分による取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円 〃 15% 50万円
5,000万円 〃 20% 200万円
1億円 〃 30% 700万円
2億円 40% 1,700万円
3億円 〃 45% 2,700万円
6億円 〃 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税を割り出す仕組みには、上記で紹介した以外にも1億6,000万円の配偶者控除があったり、不動産については小規模宅地等の軽減制度などもあります。

はじめに言ったように、相続税の計算にはいろいろな条件が複雑に絡んでくるのでわかりにくい面が多々あります。

もしそのときがきたら、専門家に相談するのがいいかもですね。

被相続人

まとめ

不動産を所有するとなると様々な税金を払うことになります。

権利を確保するための「登録免許税」、取得したことで課税される「不動産取得税」、そして贈与や相続により譲り受けたときにも税金がかかってきます。

購入するにせよもらうにせよ、不動産を持つときには税金がいるのだということを頭に入れておく必要がありますね。

今回は、不動産を取得したときにかかってくる税金についてご紹介しましたが、不動産は売ったときにも課税されます。

それについては、別のページでお話ししたいと思います。