アパートやマンションを解約するときに、賃貸のルームクリーニング費用がどれくらいかかるか気になる方もいらっしゃるのでは?
ルームクリーニング費用は、部屋の広さや汚れ具合で変わってきます。
本記事では費用の相場や、クリーニングする範囲がどこまでなのかなど解説しています。
ほぼ毎日のように賃貸の解約に立ち会っている僕が、経験と知識を基に費用を安くする方法などもお教えしますので、ぜひ参考にしてください。
不動産会社に勤務しているシュンペーです。
お客様を相手にしていつも思うのが、納得いただける説明ができているだろうかという点です。
頭で思ったことを正確に伝える練習の一環として、ブログを始めました。
不動産屋の説明がわかりにくいと感じる方のため、痒いところに手が届くようなブログにできればいいなと思っています。
資格 ~ 不動産コンサルティング、宅地建物取引士、2級建築士、賃貸不動産経営管理士など。
- これから賃貸アパートなどに住む予定の人
- 賃貸のルームクリーニング費が気になる人
- ルーム清掃費が安くなる方法を知りたい人
- 高額な原状回復の費用を請求されている人
ルームクリーニング代は誰の負担?

賃貸契約が終了して空き室になったときには、次の入居者が引越してきたときのためにお部屋をきれいに清掃します。
その際のルームクリーニング費用を負担するのは貸主、それとも借主でしょうか?
これは、管理会社や大家さんによって異なりますが、不動産会社が仲介する賃貸契約では、契約書に特約として「借主が負担する」と定められている場合が多いです。
原則は貸主だが一般的には借主負担
国土交通省が定めているガイドラインでは、借主がお部屋を清掃して明け渡した場合には、貸主がルームクリーニング費を負担するとしています。
ただ、一般的には賃貸借契約書に特約で「退去時のルームクリーニング代は借主が負担する」という文言が記載され、実際には借主が費用負担することがほとんどです。
その理由としては、入居者を獲得するためにはお部屋をきれいに維持する必要がありますが、あくまで賃貸業はビジネスなので、大家さんなどオーナー側としては、それにかかるコストを極力抑えたいという考えがあるからです。

もうひとつの理由に、清掃をどこまでやるのかや、どの程度まできれいにすれば完了というのは、個人個人で認識が異なることによります。
借主はきちんと掃除をしたつもりでも、貸主がそれでは不十分だという理由でトラブルになることがあるのですね。
そこで、そういうトラブルを防ぐために、通常は指定したプロのクリーニング業者に清掃を依頼し、費用は借主が負担するというカタチをとることが多いのです。
借主としては、ルームクリーニングの費用を負担する以上、物件から退去するときには家具や荷物、家庭ごみを撤去すればよく、念入りな掃除をする必要はなくなります。
ルームクリーニング代の支払いは拒否できるのか?
借主は、賃貸物件を明け渡すときに請求されるルームクリーニング代の支払いを拒否できるのでしょうか?
民法には、「賃借人は通常損耗や経年劣化については原状回復義務を負わない」とされています。
通常損耗というのは、通常の使用により損耗することで、たとえば家具を置いたときにできる床のへこみや色褪せなどをいいます。
経年劣化は、建物や設備が年数により自然に劣化・損耗することで、壁・天井のクロスや畳の変色などや、照明器具やエアコンなど設備の故障なども含まれます。
通常損耗と経年劣化は言葉が違うだけで、ほぼ同じことを意味していますが、民法の定義からすれば支払いを拒否できそうな感じもします。
ですが実際には、賃貸借契約書に「ルームクリーニング代は借主が負担する」という特約が記載されることが多く、この条文があると支払いを拒めないことになります。
「この条件を飲めないのであれば借りてもらわなくて結構です」という貸主の強気な姿勢が感じられますね。
でも、年数の経過した賃貸物件の場合には、入居者が入れ替わるたびに、大家さん側で何かしらルームクリーニング費以上の出費を負担することはしばしばあるんですよ。
僕は「賃貸不動産経営管理士」なので理解できるのですが、アパートやマンション経営って、一般の方が思うほど利益の出る事業でもないんですね。
「申し訳ないが掃除代は借主のほうで負担してほしい」というのが、オーナー側の本音でしょう。

この特約については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で次のように記載されています。
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
- 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
つまり特約があれば、ルームクリーニング代を借主に請求することは違法ではないとしているのですね。
ただし、ここで重要なポイントがあります。
上記のガイドラインを噛み砕いて言えば、ルームクリーニングの具体的な費用を明示し、それについて借主が同意したなら特約は有効にしますということになります。
逆に言うと、ただ単に退去時にルームクリーニング代が必要とだけの説明で、具体的な数字が示されてなかった場合には、支払いを拒否できるということですね。
実は僕の会社では、何年か前まで特約に具体的な数字まで記載していませんでしたが、現在では改めています。
プロの清掃業者に依頼する必要性
今では、賃貸物件の掃除をクリーニング業者に依頼することが、ほぼ当たり前になっていますが、だいぶ以前には入居者や大家さん自らが行うのが普通でした。
その頃には、今のようにハウスクリーニングを専門に行う業者がほとんどなかったからですね。
そして、清掃度合いの見方が人によって異なるため、入居者はきれいにしたつもりでも、大家さんからすると不十分といったトラブルもよくありました。
それに対しプロのクリーニング業者が行う掃除であれば、誰が見ても納得できるきれいな仕上がりになります。
次の項では、賃貸のルームクリーニングを依頼したときの、一般的な作業内容について説明します。
ルームクリーニング業者の作業内容

- キッチンは、台所回りに料理での油汚れやカビなどがつきものです。ルームクリーニングでは、換気扇やガス台などについた頑固な汚れまで、専用の機材や洗剤を使用して綺麗に掃除してくれます。
- 浴室は湿気により、どうしてもカビが発生しやすくなりますし、水垢が付くのも自然なことです。そのあたりを重点的にきれいにします。
- トイレの便器には、使っているうちに尿石などの汚れが付着するので、専用の洗剤などでそぎ落とすなどします。
- フローリングには、生活していると歩いたり家具を置くことで小キズがついたり、隅にはホコリが溜まるものです。クリーニング業者は清掃したあとにワックスがけまでするのが普通です。
- エアコンの掃除は専用の機材が必要で、素人がフィルターの奥まできれいにすることはできません。業者は部品パーツを外して、内部に溜まったホコリやカビまで洗浄してくれます。
- 窓ガラスや網戸、サッシの溝も、専用の器具できれいにします。
- ベランダは室外と見なし、清掃に含まない業者もありますが、行う場合にはカビや水垢などを丁寧に取り除きます。
ルームクリーニングの相場価格
賃貸のルームクリーニング費は、よほど汚れ具合がひどい場合をのぞき、お部屋の広さや間取りによって大体の相場価格が決まっています。
部屋の広さによる価格の違い
お部屋の広さにより、大体次のような相場価格です。
| 間 取 り | 相 場 価 格 |
| ワンルーム・1K | 20,000円~30,000円 |
| 1DK・1LDK | 30,000円~40,000円 |
| 2DK・2LDK | 50,000円~70,000円 |
| 3DK・3LDK | 60,000円~80,000円 |
| 4DK・4LDK | 60,000円~100,000円 |
| 5DK以上 | 70,000円~ |
上の表は目安の価格ですので、汚れ具合や地域エリアなどにより多少の前後があることを了解したうえでの参考にしてください。
価格は作業内容や時期によって変わる

ハウスクリーニング業者によっては、たとえばエアコンの洗浄は作業内容に含まれなかったり、オプションであったりする場合があります。
また、春先の転勤や入学など引っ越しシーズンや、年末の大掃除の時期などの繁忙期と、それ以外の閑散期とでもクリーニング料金が違ってくる場合があります。
ルームクリーニング費が相場より高くなるケース
ルームクリーニングの料金は、お部屋の間取りなどでだいたい相場価格が決まっていて、入居していた期間の長さで変わるものではありません。
ただ、お部屋の手入れ不十分で暮らしていると、通常の清掃で汚れが落とせない状況になることもあり、そんな場合には相場価格より高くなることがあります。
お部屋が全体的にきれいでも、部分的な箇所だけがひどく汚れてしまっているときに起こり得るケースです。
通常のクリーニングで落とせない汚れ

室内で喫煙するとクロスが変色したりニオイが染みつきますし、風通しに気をつけないと黒カビが発生したりします。
レンジフードも、油っこい料理のあとに手入れせず放置しておくと、こびりついた油汚れが落ちにくい状態になってしまいます。
たまにあるのが、入居者が窓ガラスに遮光フィルムを貼るケースですが、これをきれいにするにはかなり時間と労力がかかる場合があります。
このように、入居中に普段からお部屋をきれいに保つことを怠ると、いかにプロのクリーニング業者といえど、清掃にかなりの手間を取られたり、クロスなどは貼り換えるしかなくなったりするんですね。
これらのことは入居者の不注意により起きたことと見なされるので、ルームクリーニングの基本料金は決まっていても追加料金が必要となり、結果的に相場価格を上回る負担が発生します。
クリーニングの費用を安くするコツ

室内に家具や荷物があると、それを移動させる手間賃を請求されることもあるので、事前に撤去しておきましょう。
ただ、賃貸物件の解約時には、家具などを撤去した後に管理会社など立会いのもとルームチェックをするのが一般的ですから、普通は問題ないと思います。
大事なのは、日頃からお部屋をきれいに保っておくことです。
カビやホコリなどが溜まらないようにお部屋の風通しを良くしたり、ひと月に1回程度は簡単な掃除をしておきたいところです。
先に説明したように、通常の清掃では落とせない汚れを作らないことが、費用を安くするポイントです。
また、引越しのタイミングもあるでしょうが、クリーニング業者への依頼は繁忙期を避け、人の移動が少ない閑散期に頼むのも、費用を安くするひとつの方法です。
仕事の少ない閑散期であれば、場合によっては値引き交渉もできるかもしれませんよ。
クリーニング費用はいつ払うの?
ルームクリーニングについていろいろ説明してきましたが、その費用はいつ支払うことになるのでしょうか。
通常は、ルームクリーニング費の支払いは、賃貸契約の解約時に敷金より差し引かれるケースが一般的です。後払いですね。
本来敷金は、賃貸契約の終了とともに全額が返還されるものですが、お金の出し入れの簡便化などで、敷金から差し引く方法が取られることが多いのです。
敷金を預からない契約形式では、賃貸契約時に一定額を支払うケースもあり、この場合は先払いになります。
退去時の費用をめぐるトラブルを避けるためでしょうが、どちらの場合も実際にかかったクリーニング代がそれらをオーバーするときには、不足分を請求されることもあります。
原状回復と原状復帰の違いについて
ルームクリーニングの話からは少し脱線するかもしれませんが、そうはいっても関係することなので、ここでは賃貸契約における原状回復と原状復帰について触れてみたいと思います。
原状回復

賃貸契約が終了して物件を明け渡すとき、入居者に課せられるのが原状回復義務です。
賃貸借契約書には、「解約時に借主は物件を原状に回復して明け渡すこと」とありますが、ルームクリーニングは、この原状回復行為に当たります。
入居者がお部屋をきれいにして明け渡すことを指し、経年劣化による「壁紙の変色」や「床のへこみ」などの修繕は含みません。
原状復帰
原状復帰は、経年劣化以外による損耗箇所を修復することを指し、入居者の故意や過失により傷めたもの以外はオーナー側で行うことになります。
簡単に言えば、年月を経ることで生じる壁紙の変色や電気ヤケ、床の色あせとか、照明器具やエアコンの不具合などを通常損耗といいますが、普通に生活していて起こり得る劣化は借主に責任はないわけです。
注意点として、賃貸物件への入居前には必ず汚れやキズをチェックしておくことです。
もし異状があっても、貸主・借主の双方で認識しておけば、のちのちトラブルが発生するのを防げます。
借主が原状復帰をしなければならないケースとしては、たとえば住居以外の店舗や事務所などの賃貸物件を、使い勝手の良いように壁で仕切ったり、壁にドアを作ったりなど建物に造作を加えたときに、契約前の状態に復帰工事をする必要が出てきます。
原状回復と原状復帰の比較
区別がややこしい面もある原状回復と原状復帰ですが、国土交通省のガイドラインから判断基準の例を一部抜粋してみます。
| 賃貸人の負担となるもの | 賃借人の負担となるもの |
| 床(畳・フローリング・カーペットなど) | |
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| 壁、天井(クロスなど) | |
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| 建具(襖、柱など) | |
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以上は国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」から一部抜粋したものですが、詳しくは上記リンクよりご覧ください。
まとめ

賃貸契約では、特約により退去時に入居者がルームクリーニング費を負担するケースがほとんどです。
トラブルを避けるために、入居する前に金額や支払時期などを必ず確認しましょう。
また、ルームクリーニング費を安く抑えるためには、日頃から室内管理を心がけることも大事です。
万一、思わぬ高額なクリーニング費を請求されたら、管理会社かオーナーに説明を求めましょう。
退去時のトラブルを防ぐためには、入居前の汚れやキズをチェックしておき、責任の所在を明確にしておくことも忘れずに。
もし、入居後まもなく汚れやキズを発見したら、すみやかに管理会社かオーナーに連絡することをオススメします。
快適な賃貸生活を送るためには、原状回復と原状復帰についての正しい知識を持っておくことも大切ですね。


