不動産の売買や相続がされると、新しい持主(所有者)に名前を変えることになります。
これが不動産の名義変更ですが、ただ単に名前を変えるのではなく、不動産では動産の場合とは違い、少し複雑な手続きが必要になるのですね。
でも安心してください。この記事を読めば、これから名義変更を行う方でも手続きや費用について順序立てて頭を整理することができます。
不動産会社に勤務しているシュンペーです。
お客様を相手にしていつも思うのが、納得いただける説明ができているだろうかという点です。
頭で思ったことを正確に伝える練習の一環として、ブログを始めました。
不動産屋の説明がわかりにくいと感じる方のため、痒いところに手が届くようなブログにできればいいなと思っています。
資格 ~ 不動産コンサルティング、宅地建物取引士、2級建築士、賃貸不動産経営管理士など。
この記事では、不動産の名義変更がどんなときに必要なのか、そのときに注意することにはどんなことがあるのかなどについて解説しています。
- 売買や相続で不動産を持つことになる人
- 名義変更にかかる費用が知りたい人
- 名義変更の手続きについて知りたい人
- 複雑な名義変更を簡単に済ませたい人
不動産の名義変更とは?

土地や建物の持主を変えるため名義変更することを、所有権移転登記といいます。
所有権移転をすると、登記簿に所有者の氏名や住所が記載されます。
車や家財、あるいはパソコンやスマホといった動産は、持っていること自体で自分のものだと主張できますが、土地や建物といった不動産は、登記をしないと他人に対して所有権の主張ができないのです。
逆に、不動産を売却などで手放したときには、法務局は元の所有者の記録を登記簿上から抹消する対応業務を行います。
このように、所有権が移るごとに当事者の情報が登記されたり消されたりすることで、名義変更は行われます。
不動産の名義変更は、権利を主張するための重要な手続きだと言えますね。
名義変更が必要な4つのケース
不動産の所有者が変わるときには、所有権移転登記による名義変更を行います。
不動産の名義変更は、基本的に以下の4つのケースが考えられます。
- 売買取引のとき
- 遺産相続のとき
- 生前贈与のとき
- 財産分与のとき
ここからは、これら4つの代表的なケースについて説明していきます。
不動産売買による名義変更
金銭の授受をともなって、不動産の権利が移るのが不動産売買です。
不動産の売買では、所有権移転の登記をすることで売主から買主へ名義変更されます。
不動産会社の仲介によって売買が成立した場合には、一般的に所有権移転登記の手続きは司法書士へ依頼することが多いでしょう。
手続きは一般個人でも行うことはできるのですが、必要な書類への記入などは、専門知識を持った人に依頼するほうがミスがなく、すみやかに登記手続きが進行するからですね。
とくに買主が土地や建物、マンションやビルなどの購入資金を銀行などで貸してもらうときには、所有権移転登記がされていないとお金を貸して(融資して)もらえません。
売買による名義変更は所有権を主張するだけでなく、取引きをスムーズに進めるためにも、あまり時間をかけずに行う必要があるのです。
そこで、当事者の代理として、法律業務に手慣れた司法書士が各種手続きを行うことはよくあることなのですね。
遺産相続による名義変更

亡くなった人の財産を、残された遺族などが引き継ぐことを遺産相続といいます。
相続が発生すると、登記をすることで被相続人から相続人へ名義変更されます。
不動産の名義変更手続きは、通常であれば譲り渡す側と譲り受ける側とが共同作業で行いますが、相続に限っては、親など譲る側(被相続人)が亡くなっているので、譲り受ける側(相続人)だけで名義変更の手続きをすることになります。
相続登記は令和6年の4月1日より義務化されることが決まっており、怠ると罰則を受ける可能性もあるようです。
相続では、相続人が兄弟など複数存在するときには、事前に遺産分割協議を済ませておくことが重要です。
遺産分割協議が済んでいなかったために、失敗してしまった例を下記のページで紹介しています。
生前贈与による名義変更
所有者が亡くなってから行う遺産相続に対して、不動産の所有者が生きているうちに名義変更することを生前贈与といいます。
生前贈与は、登記により贈与者から受贈者への名義変更が行われます。
生前贈与のメリットは、所有者の意思で譲り渡す相手を特定できるので、遺産相続のときに見かけるような、取り分を巡ってのトラブルが起こる可能性が低いことですね。
反面デメリットとしては、相続税に比べると贈与税のほうが税金が高いことです。
財産分与による名義変更

夫婦が離婚するときに財産を分配することを財産分与といいます。
預金や有価証券、年金や自動車などと同じように、一戸建てとかマンションといった不動産も当然ながら財産の一部ですよね。
なので離婚の際には、持ち家や他の不動産を共同で所有しているときは売却して金銭を分配したり、売却をしないときは今後どちらの所有にするかを決めなければいけません。
そのためには夫の名義だったものを妻の名義に変えるとか、二人の共有名義だったものをどちらか一方の名義にするといった、名義変更をする必要が出てきます。
財産分与はお互いが納得のいくものでなければいけませんが、預金や有価証券であれば価値がはっきりわかるのに対し、財産の対象が不動産である場合、その金額は一般の人には判断がつきにくいと思います。
とくに売却して分配する場合には、正確な不動産価格を知ることが重要になってきます。
離婚後のトラブルを防ぐためにも、不動産価格を明確にして財産分与にあたる必要がありますが、不動産鑑定士などの専門家に直接査定を依頼すると費用がかかってしまいます。
なので、この頃は無料で価格査定できるネットサイトを利用する人も多いですね。
費用をかけずに気軽に価格を知りたい場合には、無料の一括査定サイトなどを利用するのも、ひとつの方法かもしれません。
名義変更の手続きや費用
不動産の名義変更は登記することで行われますが、登記申請する際には登録免許税という税金を納めなければなりません。
申請の際の提出書類には「戸籍謄本」とか「住民票」などがあり、少額ですがそれらにかかる費用も必要です。
また、司法書士に登記手続きを依頼する場合には、報酬を払うことになります。
不動産の名義変更にかかる必要経費は、これらすべてを合算したものを指します。
名義変更は法務局で申請

名義変更(登記)の申請は、不動産の所在する地域を管轄する地方法務局で行います。
申請の仕方には「書類申請」と「オンライン申請」の2通りがあり、どちらを利用するかは自由です。
登記申請用紙は、たった1枚から成るものですが、申請を司法書士に依頼する人が多い理由としては、用紙に書かれている専門用語がわかりにくかったり、手続きに時間をかけられないといった場合が考えられます。
法務局での受付は、原則として土日を除く平日になるので、仕事を持っている人はなかなか足を運びにくい面がありますね。
とくに、売買の所有権移転登記は個人で行う方もいらっしゃいますが、相続登記となると、遺産分割協議書とか相続関係説明図といった書類を提出する必要があり、売買などと比べると複雑な手続きになってきます。
法務局では、名義変更の申請は受け付けますが、書類作成の方法まで教えてくれません。
専門家である司法書士であれば、手続きがスムーズに進むのですね。
用意された委任状に記名、押印し、登記原因証明情報(売買契約書の写しなど)を整えれば、あとは司法書士が手続きを行い、発行された登記事項証明書は受け取りに行くか、郵送で届けてもらうことができます。
僕は、売買取引などで司法書士をお勧めしますが、時短で手続きできることと、対象物件が遠方にある場合でも確実に登記を完了させられるのが理由です。
名義変更にかかる費用
不動産の名義変更で必要な、主な費用は登録免許税という税金です。
その他にも、名義変更を申請するのに必要な書類にかかるお金や、司法書士に依頼したときの報酬料などもあります。
名義変更の費用は、それらすべてを合算したお金になると考えておけばいいですね。
登録免許税の計算は、不動産の固定資産評価額に税率を乗じて算出しますが、税率は名義変更の原因が売買、相続、贈与、財産分与のそれぞれで異なります。
- 売買 ⇒ 評価額 × 1000分の20 (2%)
- 相続 ⇒ 評価額 × 1000分の4 (0.4%)
- 贈与 ⇒ 評価額 × 1000分の20 (2%)
- 分与 ⇒ 評価額 × 1000分の20 (2%)
たとえばですが、固定資産評価が1,000万円だとすると、相続税は4万円ですが、贈与税は20万円となります。
固定資産評価額さえわかれば、税理士さんなどに頼らなくても自分で簡単に計算することができますね。
固定資産評価額は、納税通知書や各市町村役場で管理されている固定資産税台帳を閲覧することで確認できます。
登録免許税については別のページでも説明していますので、よろしければそちらも参考にしてください。
不動産を購入したり、相続や贈与などで取得すると税金がかかります。 僕も売買取引きの席で、「土地や住宅を買うため大金を払うのに、そのうえ税金も取られるのか」とか、「親から子へ土地を譲るのにも税金払うの?」というふうに、不満 …
名義変更に必要な書類
まず必要なのが登記申請書ですが、売買で使用するのはこのような用紙です。

1枚のA4の用紙ですが、名義変更の基となるもので、相続や贈与など、所有権移転の原因が異なるごとに様式も異なります。
もし、ご自分で登記申請の手続きにトライしてみようと思われる方は、法務省のホームページから用紙を入手することができますよ。
それぞれの登記申請書は、登記申請書の様式及び記載例からダウンロードしてください。
名義変更には、これ以外にも様々な書類が必要になりますが、各手続きごとに不動産登記法に定められている書類は下記の通りです。
■ 売買取引
| 売 主 |
|
| 買 主 |
|
上記以外に、売買契約書の写しや固定資産評価証明書、本人確認資料(運転免許証など)も必要になります。
■ 遺産相続
| 被相続人(相続をする側) |
|
| 相続人(相続を受ける側) |
もし上記書類が揃わないときは、不在籍証明書や登記済権利証、上申書などが必要になる場合もあります。
遺言があるときは、状況に応じて遺言書なども準備することがあります。
■ 生前贈与
| 贈与者(譲渡する側) |
|
| 受贈者(譲受する側) |
|
上記以外に、贈与契約書の写しや固定資産評価証明書、本人確認資料(運転免許証など)も必要になります。
■ 財産分与
| 現在の名義人(譲渡する側) |
|
| 新しい名義人(譲受する側) |
|
上記以外に、財産分与契約書、離婚協議書のほか、固定資産評価証明書や戸籍謄本、本人確認資料(運転免許証など)も必要です。
必要書類の解説
※登記識別情報通知 ⇒ 以前の登記済権利証(いわゆる権利証)に代わるもので、不動産が新たな所有者に名義変更されたという情報を通知する書類です。
登記識別情報は、アラビア数字その他の符号の組合せからなる12ケタのパスワードで、不動産の所在や面積、登記名義人などの情報が暗号化されたものです。
この登記識別情報は、自身の所有権を主張するだけでなく、将来第三者に所有権移転する際などに必要となる大切なものです。
通常は12ケタのパスワードが見えないよう、目隠しのシールが貼ってあります。
※固定資産評価証明書 ⇒ 土地や建物などの固定資産の評価額を記載した証明書です。
不動産の名義変更の際に必要となる登録免許税や不動産取得税は、この固定資産評価額を基準に算出されます。
固定資産評価証明書は、市役所や町村役場で請求できますが、東京23区内に限っては都税事務所での扱いになります。
※相続関係説明図 ⇒ 相続関係について、被相続人や相続人を順序だてて表した図です。
相続関係説明図の作成は手書きで構いませんが、戸籍謄本等を全てコピーして提出する方法でも受け付けてもらえます。
※遺産分割協議書 ⇒ 法定の相続割合によらないで、遺産分割したいときに作成します。
遺産分割協議によって、家族の中で誰が相続するかとか、相続する割合をどのようにするかを決められます。
相続人を単独名義にすることも、複数名義にすることも可能になりますが、いずれの場合でも相続人全員が、実印で押印する必要があります。
※不在籍証明書 ⇒ 以前は、住民票の除票や戸籍の附票は5年間しか保管されていませんでした。
そのため、保管期限が過ぎてしまうと、住民票の除票や戸籍の附票は廃棄されていたようです。
そういう理由により住民票の除票などを収集できないときに、それに代わるものとして請求できるのが、不在籍証明書や不在住証明書です。
※上申書 ⇒ 上申書とは、官公庁や警察などに対して、法的な手続きによらず申し立てや報告を行うための書類のことですが、相続登記については、住民票などの証明書類が取得できないときや、戸籍謄本での相続関係を証明できない場合に、印鑑証明書を添付して使用します。
※離婚協議書 ⇒ 離婚する際には、慰謝料や子供の親権、養育費などについて取り決めますが、なかでも重要なのが財産分与に関することです。
土地や家屋といった不動産も財産の一部ですが、所有を巡って口頭だけで約束しておいたのでは、記憶違いなどで後々のトラブルに繋がる可能性があります。
両者で決めたことを、将来的にも確認できるように、契約書として作成するものが離婚協議書です。
名義変更で注意したいこと

前項で示したように、不動産の名義変更には費用がかかりますが、割合でいうとほとんどが税金です。
名義変更にともなう税金は、不動産取得税、譲渡所得税、相続税、贈与税があります。
戸籍謄本とか住民票のような書類代については数百円程度の出費なので気にするようなものではありませんが、負担になるとすればこれらの税金です。
たとえば不動産取得税は、遺産相続と財産分与については非課税扱いなので税金はかかりませんが、不動産売買と生前贈与では課税されます。
買ったりもらったりしたあとで、お金が無いので税金が払えないではすまされません。
名義変更する際には、そのあたりにも注意しましょう。
不動産を購入したり、相続や贈与などで取得すると税金がかかります。 僕も売買取引きの席で、「土地や住宅を買うため大金を払うのに、そのうえ税金も取られるのか」とか、「親から子へ土地を譲るのにも税金払うの?」というふうに、不満 …
名義変更は司法書士に頼むとラク!

不動産の名義変更をする登記手続きは一般の人でもできます。でも、ほとんどの人が司法書士に頼みますね。
僕たちが売買取引のお世話をさせていただくときにも、ほとんどの場合に司法書士に登記手続きを依頼することをオススメし、紹介もします。
その理由はズバリ、名義変更にかかる時間と労力がハンパないからです。
名義変更の申請をする場所は法務局になりますが、一度や二度じゃなく三度四度、場合によってはそれ以上に、何度も足を運ぶこともあります。
慣れない作業では、どうしても書類の誤記入や不備があったりするからですね。
何度も法務局へ通うのは、よほど暇のある方でもない限り、仕事を持っている人にはとても負担になります。
それ以外の理由としては、売買で融資を受ける場合には、金融機関は所有権の移転登記が完了したあとの物件に対して抵当権の設定登記を行うので、一連の作業がスムーズに流れないと、売買取引自体が進まないということもあります。
専門的な言い方になりましたが、簡単に言うと、銀行などは所有権移転登記が済まないと、お金を貸してくれないということです。
売主としては、お金を受け取らないうちに所有権は渡せませんし、買主は所有権がないとお金を借りて支払うことができないので、一般的に所有権移転登記と抵当権設定登記は同時に行われます。

そういった、複雑かつ重要な作業をよどみなく進めるために、専門家としての司法書士の登場となるわけですね。
その他にも相続の名義変更であれば「遺産分割協議書」、生前贈与なら「贈与契約書」、財産分与は「財産分与契約書」といったように、難しい書類が必要なこともあります。
さらに、あちこちに点在する相続人すべての同意を取りつけたり、被相続人の戸籍を遡って調査したり、名義変更する不動産が複数あったりする場合もあります。
それらについて一般個人が対処しようとしても、すぐにお手上げ状態になるでしょうし、実際問題無理だと思います。
なので費用はかかっても、それらの作業を要領よくスピーディーにこなしてくれる司法書士に頼む人が多いのですね。
司法書士に依頼すると、自分では気づかない注意点などをアドバイスしてもらえるメリットもあります。
司法書士の報酬額
司法書士へ支払う手数料のことを報酬といいます。
司法書士の報酬額は、たとえば不動産業者の仲介手数料のように「法定手数料」として定まったものではなく、自由化されているので事務所ごとに違います。
日本司法書士会連合会による「報酬アンケート」を見ると、名義変更に関係する報酬の額は3万円くらいから15万円くらいと、かなりな幅があるようです。
司法書士の報酬 ~ 日本司法書士会連合会
司法書士の報酬額は、依頼の内容とか、相続人の数や名義変更する不動産の数などによっても変わってきます。
ざっくり言うと「仕事の手間が増えれば、報酬の額も上がる」といった感じです。
もし、司法書士に依頼する機会があるときは、事前に費用を確認するのがいいですね。
電話などで問合せても、丁寧に教えてくれるはずです。
まとめ

不動産の名義変更が必要になる場面を、ケースごとに取り上げました。
それぞれのケースで必要になる税金の額が違うことや、不動産の名義変更とは所有権移転登記のことであることを紹介しました。
また、名義変更の手続きは専門家である司法書士に任せるのがラクでオススメだとも言いましたね。
不動産の名義変更は、手間や費用面を考え併せ、ご自身にとってのメリット・デメリットをよく理解してから手続きに移りましょう。








