賃貸契約では敷金や礼金、仲介手数料など高額な初期費用が必要になるので、お部屋探しを躊躇する人も少なからずいます。
そこで最近は、「賃貸契約の仲介手数料が0円」というキャッチフレーズで、入居者の初期費用が抑えられることを強調した不動産広告をよく目にするようになりました。
入居者からすれば出費が減るので嬉しいところですが、仲介手数料で成り立つ不動産会社はそれで大丈夫なのでしょうか?
YouTubeなどでも、「仲介手数料が無料になる秘密」という動画があったりしますが、どれも核心には触れておらず、僕には不動産会社が入居者を獲得するためにアップしているようにしか見えないんですよね。
不動産会社に勤務しているシュンペーです。
お客様を相手にしていつも思うのが、納得いただける説明ができているだろうかという点です。
頭で思ったことを正確に伝える練習の一環として、ブログを始めました。
不動産屋の説明がわかりにくいと感じる方のため、痒いところに手が届くようなブログにできればいいなと思っています。
資格 ~ 不動産コンサルティング、宅地建物取引士、2級建築士、賃貸不動産経営管理士など。
仲介手数料が0円になれば、初期費用の負担が減るのは間違いありませんが、実は借主さんにとって良いことばかりとは限りません。
この記事では、賃貸の取引を2000件以上扱ってきた知識をもとに、これからお部屋探しを始める方が、希望する物件に安心して暮らせるようポイントを絞って解説しています。
- 賃貸契約で仲介手数料0円になる仕組みを知りたい人
- 自分にピッタリのお部屋探しをしたい人
- お部屋探しで失敗したくない人
- ペットとトラブルなく暮らしたい人
仲介手数料が無料の場合の落とし穴
仲介手数料が無料になるケースとしては、下記の3つが考えられます。
- 大家さんと直接契約する
- 大家さんが仲介手数料を負担する
- サブリース物件を契約する
ただし、「仲介手数料は無料です」という言葉に引かれて契約したものの「失敗した!」と後悔することはザラにあります。
ここでは、仲介手数料が無料の賃貸物件を契約する前に、注意すべき点について解説しています。ひとつずつ見ていきましょう。
大家さんとの直接契約での注意点

不動産会社の仲介なしに、直接大家さんと賃貸契約を結べば仲介手数料は発生しません。
そして賃貸物件は、経年により老朽化した(古びた)箇所や、生活するうえで自然に損耗した(傷んだ)部分が出てきた場合は、基本的に大家さんが修復するのが原則です。
そのことをちゃんと理解している大家さんであれば良いのですが、そうでないときは修復費用を請求されたりすることもあるんですね。
大家さんのなかには、賃貸契約における貸す側の義務について無知な方もいらっしゃるので、第三者の立場で調整してくれる不動産業者がいないと面倒になることもあります。
大家さんが手数料を負担の注意点
空室の期間が長くなると、大家さんが仲介手数料を全額払って契約時の借主の負担を減らすことで、早く入居者を確保しようとする場合があります。
この場合、借主側にすれば仲介手数料を払わなくてよくなるので良い条件ではあるのですが、少し冷静に考えてみたいところです。
なぜなら、物件が長く空いているのには何か理由があるはずで、ざっくり言えばその賃貸物件は人気がないと推測できるからです。
人気のない理由としては、
- 家賃が相場より高い
- 交通アクセスが悪い
- 築年数や設備が古い
などが考えられるので、単に仲介手数料が無料だということだけ重視せず、自分に本当に適している賃貸物件かどうかを冷静に判断したいところです。
サブリース物件の注意点

サブリース方式では、業者が貸主の大家さん(所有者)から賃貸不動産を借り受け、不動産会社自らが貸主(転貸人)となって第三者に又貸しをします。
この場合も、仲介手数料は必要ありません。
仲介手数料は、不動産会社が間に入って仲介作業が行われることで発生するわけですが、サブリースの場合は業者が貸主となるので大家さんと直接契約するのと同じになるため、仲介手数料は発生しないのですね。
ところでサブリース方式では、家賃の約2割程度は管理手数料として不動産業者に入り、もともとの大家さんには残りの8割程度、通常よりも安い家賃しか入ってきません。
そのかわり大家さんにすれば、空室が出た場合でも毎月安定した収益を見込めることになるわけです。
ですが、少しでも多い家賃収益を望むのが人情ですよね。
そこで、そういう場合には家賃設定が相場より高く設定されていることもあります。
どういうことかと言うと、仮に家賃が50,000円だとすると大家さんにはその8割の40,000円が入りますが、家賃を60,000円に設定しておけば48,000円に増えるということです。
すべてのサブリース物件がそのように家賃設定されているとは言いませんが、ここでも仲介手数料が無料という魅力的な言葉に惑わされず、家賃が相場価格と照らし合わせて適正であるのか確認する必要があるでしょう。
もし、相場より高い家賃を払い続けることになると、一時的に仲介手数料が無料で得した感を味わっても、何年か暮らすうちには高い家賃を払ったぶん、最終的には損をすることになるからです。
サブリース業者は物件が限定される
賃貸契約で仲介手数料が無料になるのは、大家さんとの直接契約や不動産会社が大家になるサブリース物件の場合であることはお分かりいただけたでしょうか。
このとき、サブリース物件を中心に扱う業者としては、他社の物件を扱っていたとしても、優先的に自社の扱うサブリース物件に入居者を誘導したいというのが本音です。
わからなくはないですよね。一時的な仲介手数料を得るより、長く安定して管理手数料が入るほうがサブリース業者の経営も安定しますもの。
それからすると、物件探しで相談に訪れたお客に対し、自社扱いの物件を中心に紹介するようになるのは自然の流れかもしれません。
ただこれは、賃貸物件を探す側の立場からすると、紹介してもらえる物件が限定されてしまうというデメリットにつながります。

「仲介手数料は不要です」という甘い言葉の裏には、このような思惑もあるのですが、だからといって業者が違法なことをしているわけではありません。
宅建業法では、仲介による賃貸契約ではない場合に仲介手数料を受領するのは違反なので、そこを逆手にとり「仲介手数料0円!」を強調しているのです。
賃貸物件を探す人にはとても魅力的に響く言葉ですが、当たり前なことを言っているに過ぎないのですね。
話を戻すと、主にサブリースを扱う不動産業者では限定された賃貸物件だけが紹介され、実は紹介されなかった情報の中にこそ、あなたの希望にピッタリ合う物件が存在する可能性もあるということです。
賃貸物件を探すときの注意点

インターネットが大幅に普及した今、賃貸物件探しもかなり変化しました。
以前は、お気に入りの物件が見つかるまで、あちこちの不動産会社へ足を運んでいましたが、この頃は不動産会社のホームページや大手ポータルサイトを閲覧し、居ながらにして賃貸物件が探せる時代です。
ですが、仲介手数料が無料だからと跳びつくのではなく、やはり必ず内見をして細かい点もチェックしてから契約に臨むべきです。
ここでは、賃貸物件を決めるうえで重要ないくつかのポイントについて説明します。
必ず現地を訪れる
ネットサイトを閲覧すれば、間取りや外観などはある程度知ることができますが、実際に現地を訪れて周囲の環境などもチェックしておくことは大事です。
現地へ行かなければ確認できないことは、
- 部屋の日当たりや風通し
- 騒音や異臭を放つ施設のあるなし
- 物件や周囲の雰囲気
などがあります。
部屋の開口部(窓など)が、どの方位に面しているかはネットでもわかりますが、隣接する建物などにより部屋の明るさや日当たり、風通しなどは影響を受けます。
必ず現地を訪れて確認しましょう。

ビジネスマンが、転勤などで遠隔地へ移動する場合、ネットを利用しての賃貸物件探しをすることも多いと思います。
そういうとき、大抵の場合は職場へのアクセスなど、利便性の良い場所を希望することが多いと思われるのですが、利便性ばかり重視して、現地確認せずに契約するのは避けたいところです。
利便性が良いということは、人の流れや交通量が多い可能性が高く、外部からの騒音に悩まされることがあります。
どうしても現地確認ができないときは、転勤先の職場の人など、誰か代わりに確認してもらうことを考えたいところです。
また、近くに化学工場があったり、建物の1階に居酒屋などがある場合には、焼き鳥や焼き魚のニオイなど、異臭や悪臭に悩まされるといったことも考えられます。
入居しようと思う物件の雰囲気や、どんな住人がいるのかは、建物の共用部分(通路、エレベーター、ゴミ出し場)の状態などでも、だいたいわかります。
それと、できれば夜間に訪れてチェックすることもオススメです。
昼間は気づかない深夜営業のお店があったり、街灯が少なく夜道が暗いなど、治安が気になる人には向かないエリアの場合もあるからです。

また、最寄りの駅やスーパーまでのアクセスも大事ですが、駅の場合は路線や終電の時刻なども確認しましょう。
入居したあとで、通勤・通学するのには不便な路線だったと気づいても遅いですからね。
気になることは質問する
建物の外部や内部でキズや汚れなど、気になる箇所は指摘して、内見のときなどに明らかにしておきましょう。
家賃はもとより、契約時の初期費用や更新手数料も最初によく確認する必要がありますが、もし家賃が相場より安いなど、諸条件が良すぎると感じたら、事故物件でないかも質問しましょう。
事故物件であることを隠す不動産業者は、ほんのひと握りであるにせよ、いないわけではありません。
賃貸物件を探すときの注意点としては、「ちょっと話がうますぎるぞ」と思うときには、仲介手数料ゼロ円と広告されていても、様々な点をよく確認することが重要ですよ。
ペットと住むときの注意点

昨今のペットブームの影響で、ペット飼育が可能な賃貸物件も増えてきました。
ペットと一緒に暮らすときに注意したいのは、部屋の内装材がキズのつきやすいものである場合、ペットがキズをつけてしまったときには、退去時の原状回復費用が高額になる可能性があることです。
ペットを飼育するときには、床にマットやカーペットを敷くとか、ドア周りに保護シートを張るなどの対策を行いましょう。
カーペットは、ペットが走り回る音なども吸収するので、よくある下の階からの苦情トラブルの予防にもなります。
それと、定期的にペットの爪を切るとか、ネコちゃんには専用の爪とぎを用意するのも有効ですね。
ペットは排せつ物などニオイもつきやすいので、ペット用トイレは常にキレイにしておく心配りも大切ですよ。
ペットのニオイが染みついたという理由で、原状回復費用が高くなることがあります。
また、ペットと暮らす場合には、高層階の部屋は避けたほうが良いかもしれませんね。落下事故に繋がる危険性があるからです。
そのほかにも、近くに動物病院があるかとか、ワンちゃんには安全に散歩ができるルートや公園などがあるかもチェックしておきたいですね。
ペット好きな人は、1頭ではなく複数頭を飼う人もいます。
でも、ペット飼育可の賃貸物件では、多頭飼いは禁止しているところがあります。
それと、ペットと一緒に住める物件でも、すべての住人がペットを飼っているとは限りません。なかには犬や猫が苦手な人もいるかもしれません。
ペットと一緒に快適な生活を送るためには、最低限のルールは守るようにしましょう。
それから、ペット飼育をする場合には、家賃や礼金が一般よりも高くなることがあることも頭に入れておいてください。
まとめ
賃貸契約の際にかかる仲介手数料は家賃1か月分と定められていますが、決して安い金額ではないですよね。
なので、仲介手数料を払わずに契約できるのであればそれに越したことはないのですが、「仲介手数料0円」にはメリットばかりではなくデメリットもあることを頭に入れておきましょう。
また、失敗しないお部屋探しをするためには入念な下見調査が必要なことや、ペット可物件でトラブルなく暮らすためのポイントもご紹介しました。
自分が不動産業に関わっていながら、ある意味、裏話を暴露しちゃった感もありますが、賃貸物件を選ぶときのヒントにしてもらえたらと思います。


